相続放棄
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相続放棄をお考えの方へ
1 相続放棄のメリット
⑴ 借金がなくなる
メリットの一つ目は、亡くなった方の借金を支払わなくて済むことです。
ここでいう借金とは、カードローンや銀行からの借り入れだけでなく、亡くなって相続人が不明のまま支払われていなかった固定資産税なども含まれます。
相続放棄を行いますと、これらの借金を原則返済しなくてよくなります。
そのため、亡くなった方が借金をしていた可能性がある場合は、まずは相続放棄を検討することになります。
相続放棄の期限は、自分を相続人とする相続の開始を知った日から3か月しかないため、相続放棄を検討する場合は、早めに取り掛かることが大切です。
相続関係が複雑な場合などは、戸籍集めに時間がかかる影響で、手続きに1~2か月の時間がかかることもあります。
⑵ 相続手続きに関わる必要がない
メリットの二つ目は、面倒な相続手続きにかかわらなくてよい点です。
相続手続きは複雑で時間と手間がかかります。
プラスの財産とマイナスの財産を比べて、プラスが多い場合は、相続をした方が得に見えます。
しかし、財産を相続するには、相続人を特定して連絡を取り、相続財産を調査して、遺産の分け方について相続人全員と話し合ってサインと判子をもらう必要があり、それだけでも大変です。
特に、疎遠になっていた親戚が亡くなった場合は、何十年と連絡を取っていなかった親戚とお金の話し合いをすることになります。
遺産の分け方を巡って争いになるおそれもありますので、相続トラブルに巻き込まれたくないという理由で相続放棄をする方もいらっしゃることと思います。
また、仮に財産を相続できたとしても、その後には名義変更や売却などの手続きが控えており、さらに費用と時間がかかります。
相続手続きで利用することの多い役所や銀行などの機関は、平日の日中しか空いていないことが多く、仕事をしながら時間を調整してこれらの手続きを行ってまで相続するメリットがあるのかはよく考えなければいけません。
そのため、財産がプラスになるけれど、手間を考えるとメリットはないからということで相続放棄をする人も少なくありません。
また、相続放棄をするには財産調査をする必要はありません。
そのため、プラスかマイナスかに関係なく、一切の財産調査をせずに相続放棄をする人もいます。
2 相続放棄をする際の注意点
相続放棄をしようとした結果、予期せぬ事態に陥るケースもあります。
⑴ 相続放棄ができなくなったケース
遺産を少しでも使ってしまうと「単純承認(=相続を認めること)」にあたり、相続放棄ができなくなります。
たとえば、亡くなった方のご家族の場合、銀行口座の暗証番号を知っていたりしますが、仮にそこからお金を引き出して葬儀費用を払ってしまうと、相続を認めたことになる可能性があります。
また、亡くなった方の車などの不用品の処分・売却も極めて危険です。
しかし、生命保険金や年金は問題ない場合もあるなど、何をしたら単純承認にあたるかの判断は極めて難しいです。
⑵ 自宅から出ていかなければならないケース
たとえば、家族全員で住んでいる自宅が亡くなった父親の名義だった場合、借金があるからと相続放棄をすると、自宅が他人の手に渡ってしまいます。
そのため、相続放棄をする際は、放棄してはいけない財産がないかよく確認し、場合によっては自宅を出ていくか借金の支払いをするか決断しなければいけない場合があります。
⑶ 相続放棄をしても借金の支払義務が残ってしまうケース
相続放棄は亡くなった方の借金の支払義務を一切相続しないで済む、有効な手段です。
しかし、相続人が亡くなった方の借金の保証人になっている場合は、相続放棄をしても借金はなくなりません。
これは、保証人としての借金の支払義務は、亡くなった方の借金とは別物であるため、相続放棄では消えないからです。
相続放棄をして自宅を手放したのに、借金は残ってしまうというケースもありますので、相続放棄をする際は、注意が必要です。
3 まずはご相談ください
相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったことになるため、マイナスの財産を引き継がなくて済むなどのメリットがある一方、相続放棄をした結果損をするケースなどがありますので、慎重に判断することが大切です。
対応によってはそもそも相続放棄ができなくなることもありますので、相続放棄をお考えの横浜の方は、まずは私たちにご相談ください。
相続放棄の方法
1 相続放棄は裁判所に申立てをする必要がある
一般的に使われる「相続放棄」という言葉と、法律用語としての「相続放棄」は、意味が異なります。
他の兄弟が用意した放棄の書類にサインをして判子を押したり、「私は相続を放棄します。」と口頭で伝えたりするだけでは、法律的には相続放棄をしたことにはなりません。
法律的に相続放棄をしたというためには、戸籍謄本等の書類を揃えて、裁判所に申立てをする必要があります。
裁判所での相続放棄をしていないと、兄弟間で相続を放棄する旨を伝えていたとしても、亡くなった人の借金や未払いの税金等を支払わなければいけなくなったり、相続手続きのたびにサインと判子を求められたりすることになってしまいます。
2 相続放棄の流れ
相続放棄は、裁判所に必要書類を提出して、裁判所の審査が完了すると、相続放棄申述受理通知書が届いて完了となります。
具体的な流れは以下のとおりです。
- ①裁判所に、申立書等の提出
- ②裁判所において審査
- ③裁判所から照会回答書が送られてくる
- ④照会回答書を記入して、裁判所に返送
- ⑤相続放棄申述受理通知書が裁判所から送られてくる
3 相続放棄の必要資料等
裁判所に相続放棄の申立てをする際に必要となる資料は以下のとおりです。
- ①相続放棄申述書
- ②被相続人の除籍謄本
- ③被相続人の住民票除票
- ④相続人の戸籍謄本 ※1
- ⑤収入印紙800円
- ⑥予納郵券 ※2
- ⑦相続放棄を死亡後3か月経ってから行う場合、相続の開始を知った時から3か月以内の申立てであることがわかる資料 ※3
※1 必要になる戸籍謄本は、被相続人と相続人の関係性(父と子、祖父と孫、叔父と甥etc…)によって異なり、追加で戸籍謄本が必要になる場合があります。
※2 裁判所に事前に納める切手となります。裁判所はこの切手を使って、郵便物を送ります。必要な金額は、裁判所ごとに異なります。
※3 市役所からの税金の督促、借金の督促、警察からの電話の履歴etc…
4 相続放棄を行う裁判所
相続放棄の申述を行う裁判所は、どこでもよいわけではありません。
被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に申し立てなければいけません。
違う裁判所に申し立ててしまった場合、申立てし直さなければならなくなってしまいます。
相続放棄の期限を過ぎてしまう可能性があるため、注意が必要です。
裁判所のホームページで管轄区域を調べることができます。
参考リンク:裁判所・裁判所の管轄区域
5 相続放棄の期限
相続放棄は、「相続の開始を知った時」から3か月以内に行う必要があります。
「相続の開始を知った時」とは、
- ①被相続人が死亡したこと
- ②自身が相続人となったこと
の両方を知った時となります。
例えば、そもそも死亡したことを知らないときは、「①被相続人が死亡したこと」を知らないため、相続放棄の期限はスタートしません。
また、兄弟が死亡したことは知っていても、子供が相続放棄をしたことを知らないと「②自身が相続人となったこと」を知らないため、相続放棄の期限はスタートしません。
死亡したことは知っていたけれど、借金があるとは知らなかった場合は、相続放棄の期限はスタートしてしまうので注意が必要です。
相続放棄をした方がよいケース
1 借金などマイナスの財産が明らかに多い場合
相続放棄をすると、プラスの財産もマイナスの財産も引き継がないこととなりますが、一般的に、マイナスの財産が明らかに多い場合、いわゆる債務超過の場合には、相続放棄をした方がよいでしょう。
2 被相続人と疎遠であった場合
もちろん、被相続人と疎遠であったとしても、相続ができないというわけではありません。
しかし、被相続人との関係性によっては、財産の内容にかかわらず、相続に一切かかわりたくないという場合もあります。
そのような場合は、相続放棄をすることによって、相続手続きに関与しなくて済むこととなります。
また、被相続人と疎遠であったので、財産や債務等の事情がよくわからないという理由で相続放棄をしたいと考えることもあります。
たしかに、事情がわからないものを承継するのはリスクが大きいといえます。
この点は、調査の方針やコスト、リスクなどについて、専門家に相談されることをおすすめします。
3 他の相続人とのトラブルが予想される場合
相続人の人数が多すぎて複雑になり長期化が予想される場合や、他の相続人との話し合いでトラブルが予想される場合など、このようなトラブルを避けるために相続放棄するというケースもあります。
この点は、たしかに話し合いは大きなストレスになるところであり、相続財産の内容などにもよりますが、相続放棄をした方が楽だという判断はありうるところです。
ただし、弁護士に交渉を依頼することで、このような話し合いのストレスが軽減できるという可能性もあります。
相続放棄か遺産分割かなどの方針について、まずは弁護士に相談してみるのもよいでしょう。
4 空き家などが相続財産である場合
空き家などがほとんど唯一の財産であるような場合、樹木の剪定や除草などの管理に手間がかかる一方で、不動産として活用しがたいというのであれば、相続放棄をしたいと考える方も多いでしょう。
空き家については、相続放棄をするタイミングでその家に住んでいたケースなど、その財産を占有していた場合には、引き続き一定の管理責任を負うこととなるため、注意が必要です。